こんにちは。青砥美穂です。
今日は5歳の息子さんをもつお母様からのお悩み相談をご紹介させてください:
息子が読み書きを全く覚えません。興味がないため、教えても教えても頭に入っていかず、私が無理矢理やらせようとしたせいで逆に苦手意識や嫌悪感を持ってしまいました。周りのお友達は皆本を自分で読んだり字を書いたりしている中、息子はまったくそうなる気配がなく、このまま来年小学生になると思うと非常に心配です。どうしたら読み書きをちゃんと学んでくれるでしょうか。
このような悩みは、読み書きに限らず持たれたことがある親御さんが多いのではないでしょうか。周りの子はできているのに我が子はできない、または劣っている、 と悩んだり心配してしまうケースです。
この悩みに関しては、もちろん息子さんのことをもっと教えていただく必要があると思うのですが、私がこれまで出会った子どもたちの中にも5歳でも6歳でも読み書きをしない子はたくさんいました。と同時に、スラスラやっている子たちもまたたくさんいました。
読み書きだけに注目すると、できる方が良い、できないのは心配、となりがちですが、子どもたちの発達の仕方はもちろん個人差がありますよね。
私は「〜〜が他の子よりができない」とご相談いただくと、「じゃあ、その部分ではない「どこ」が代わりにぐんっと育っているんだろう!?」とワクワクしてしまいます。なぜなら、いつもそんなふうに何かの発達が遅れているようにみえるとき、それは多くの場合、個人差があって発達する場所の順序が違ったり、才能が違ったりしているということで、他の思いもよらないところが他の子どもよりずっと発達していたり、才能が際立ったりしているということを子どもたちにたくさん見せてもらってきたからです。
それをどんなふうに見つけていけるかというのはまた別の機会にゆっくり書かせていただきたいのですが、今日はいただいたお悩みに対して「どんなふうに学びを一緒に進めていけるのか」「成長に繋げていけるか」について考えてみたいと思います。
● 「最適期」と「個人差」があることを確認
幼い子どもに何かを学んで欲しいと思う時、あるいは一緒に何かを学んでいく時、色んなやり方があると思うのですが、「最適期」というものを利用することは一つとても有効な手段だと感じています。
ご存知の方も多いと思いますが「最適期」とは、「ある刺激を与えられた時、その効果がもっともよく現れる時期」です。臨界期の方が馴染みがあるかもしれません。言語やがまずわかりやすい例としてよくあげられますよね。トイレトレーニング、社交、読み書きなどなど様々なこともこの「最適期」を利用することでお互いにストレスを最小限に、しかも短期間で習得していくことができるでしょう。
ただ、とても重要なこととして、最適期は、「個人差がある」ということがあります。同じ技能を習得するのでもそれを最も効果的にできるタイミングは子どもによって違います。
「最適期」があること、そしてそれは子どもによって、テーマによって「個人差がある」ということをあらためて認識しておくことは非常に大切でしょう。
● タイミングを待ち、逃さない!
最適期がやってくると、そのサインを子どもたちが教えてくれることが多いです。読み書きに関してであれば、「あれはなんて書いてあるの?」「〜〜ってどうやって書くの?」など興味をもってたくさんの質問をしてきたり、やりたがったりします。それまではいくら教えても全然頭に入っていかなかったのに、本人が興味を持った瞬間あっという間に学んでしまった!というケースはとても多いです。
それをやりたがったり、興味をもったりするタイミングを逃さず一緒にノッて次のステップに行ってみましょう!
そして、そうなるまでは辛抱強く楽しみに待つということも重要でしょう。
● 楽しむ仕掛けづくり
次に「楽しむ仕掛け」づくりについてです。
これは「最適期かもしれない!」と思った時、また、「最適期、早く来ないかなあ」と思っている時、両方に有効かもしれません。
「その学び」に関することで子どもが興味をもちそうなこと、楽しめそうなことを生活の中に散りばめて一緒に遊ぶように学んでみるという仕掛けづくりはいかがでしょう。楽しむことでまだ興味をもっていなかったものに興味が湧いて学びたくなったり、最適期の学びがさらに促進されたりする可能性が高まります。
例えば、「読み書き」に関してはその子の好きなキャラクターやアイテム、や身近なものの名前を使ってみたり、日常の中でゲームをたくさん取り入れたりしてみるのはいかがでしょう。
以前、6歳で全く読み書きをしていなかった電車好きの子どもが、お母さんと駅の看板の文字を一緒に読む練習を始めた瞬間からものすごい速さで色んな文字を読むようになっていきました。ひらがなをすっ飛ばして漢字にも興味を持ち始めたくさんの漢字を読めるようになっていて、びっくりしたのを覚えています。また覚えた駅名をすぐに書きたがり、家中に駅の看板ができたそうです。
また食べることやレストランごっこが大好きな女の子は、家でおやつやご飯のメニューを毎食お母さんが書いて見せていたらどんどん読めるようになり、すぐに自分でもメニューをつくるようになり、読むのも書くのも覚えていきました。
家の中のあらゆる場所やものにひらがなやカタカナで名前を書いて貼りクイズ形式で覚えていくことを楽しんで覚えていった子たちもいました。
「なんて書いてあるんだろう?」「自分も書きたい!!」となるような仕掛けをいっぱいつくっておくのはこちらも子どもも楽しいですよね。親子で楽しむというのもキーです。
あいうえお順とか、ひらがなが先、などの法則よりも興味や関心に結びつけて学ぶのはとても有効です。もちろん興味を持ち出し、学びたがったらそれぞれを紹介して学んでいくのも楽しいでしょう。
ちなみに、我が家は、家族の顔写真や好きなものの写真にその頭文字が書いてあるオリジナルカルタを夫がつくり(例:まま(私)の写真で「ま」の文字のカルタ)家族で遊んだり、朝起きたら娘が通るところに「おはよう」というカード、帰ってきたら「おかえり」や「あいしてる」というカードを並べてみたり、素敵なレターセットに娘がオリジナル文字を書いてお手紙交換をしたりして楽しんでいるところです。正しい文字を書くことよりも、まずは楽しむこと、興味をもつことでさらに学んでいけるということをたくさんの子どもたちに教えてもらったからです。
とにかくお互い楽しむ、楽しいからまたやりたくなる、繰り返すから学んでいく、学ぶって楽しい!というサイクルをつくることができたら素敵だなあと感じています。
そして、その仕掛けづくりの過程でその子その子のユニークネスに注目することは、楽しく読み書きに結びつけられるだけでなく、人と同じではない大切なその子の成長や特性に気がつくこともでき大変価値あることなのではないでしょうか。人と比べてどうかではなく、その子ならではの素敵さが実はたくさんたくさんありますよね。
●プロセスを楽しみ、うまくいったら振り返って祝う
実際学ぶということを始めてみると、ついつい結果を求めたい気持ちが出てくるかもしれません。もちろん初めはうまくいかないことが多いのは当たり前なのに、なぜ上手にできないのか、失敗したり間違えたりしてしまうのかとできない方に気持ちが向きがちになるというケースは当然ながらとても多いです。そしてそれは親だけでなく、取り組んでいる子どもに関してもいえることです。読み書きを進めていく上で、全然読めない文字に出会ったり、書きたい文字がうまく書けなかったりしてイライラしたり、自信をなくしたりするかもしれません。そうすると、途端にお互いに楽しい時間ではなくなってしまいます。
親子で学びをしているとそのイライラやネガティブな気持ちのぶつかり合いでうまくいかないというケースがとても多いです。
そこで、プロセスを楽しむということを意識してみるのはいかがでしょう。プロセスに価値を置き、楽しむことはレジリエンスを育む上でも大切です。
そんなにすぐにできるようにはならない、失敗こそ価値がある、ということを思い出し、ゴールを「成功」ではなく「成長」にするのです。
うまくいかなかったときも、最初よりできるようになっている部分があったり、変化している部分があったりするはずです。そういうポジティブな部分ににフォーカスして、成長を讃えてみてはどうでしょう。
そうすることで子どもも「成功」よりも「成長」に価値をおいて取り組むことができるかもしれません。このマインドセットは読み書きに限らず何かにトライし続ける際非常に重要です。
そして同時に、うまくいったら、乗り越えてきたことを振り返ってお祝いということもとても幸せな時間になり、学びを促進してくれるでしょう。
以前、「ぬ」がうまく書けず投げ出しそうになっていた子がいました。ある日、きれいに描けるようになったタイミングで、これまでどんな悔しい思いをしたか、どうして書けるようになったのか一緒に振り返ってお祝いしました。それ以来、何かできないことがあると「ぬ」が書けるようになったプロセスを思い出して頑張っているそうです。
幼少期の学びに、最適期を利用しつつ、学びを楽しみ、成長につなげていく
いかがでしたでしょうか。
これは、幼い子どもに限らず私たちが学んでいくときにもあてはまることがたくさんありますね。好奇心、興味を大切に、学びを楽しんでいく、プロセスを大切にして成長を喜んでいく、ということを私もあらためて大切にしたいと感じました。皆さんのご経験や工夫も教えていただけたら嬉しいです!