「今、電話できますか?」
留学中の高校生からのこのメッセージに始まったある出来事
あれからもう何年も経っているのに、今でも思い出すと色んな感情が込み上げます。
彼は当時、スポーツ留学をしていました。数々の審査にパスして、見事そのスポーツの名門校に奨学金付きで留学が決まり、その国に渡って1年が経過したところでした。授業を最低限履修し、あとはとにかく朝から晩までそのスポーツの練習にあけくれて過ごしているという話をきいていました。
たまにLINEで近況を報告し合ってはいたものの、電話をしたいなんて言われたことはなかったので一体どうしたんだろう?と思いすぐに連絡してみました。
すると.....
通っている学校のスポーツコーチから
「これまでみてきて、君の骨格はこのスポーツに向いていないのでもう辞めたほうがいい」
と言われたことを話してくれました。
え?
どういうこと?
じゃあ、これからどうするの?
次々と浮かぶ疑問は、まさに彼の中でも浮かんでいる疑問でした。
スポーツ留学をしている彼がそのスポーツをやめるということは、イコールもうその学校にいられなくなることを意味していました。そしてその学校にいられなくなるということは多くの場合帰国を意味することになるでしょう。
他のあらゆることを犠牲にして取り組んできたことをある日突然取り上げられてしまう
これからどうしたらいいのか、どうできるのか、全く見えない
しかも、異国の地でひとりぼっち
どんなにショックでどんなに不安だったことでしょう。
想像しただけでも胸が苦しくなりました。
ひとしきり彼の話や気持ちを聞かせてもらった後に、
とにかくこんな大変なときに私を思い出して連絡してきてくれてありがとう
この経験をしたこと、後で「良かった」と思える未来を必ずつくれるし、つくっていこう
それだけ伝えさせてもらいました
もちろん、そんなに簡単に切り替えられるものでもないことは想像できましたが。。
ご両親も遠い異国の地で愛しい息子がこんな厳しい状況に置かれ、どれだけ心配されたことでしょう。
あれから5年たった今、彼はその国にまだ残っていて、大学で自分が学びたいことを伸び伸びと学んでいます。スポーツ留学をしていた学生、ましてや途中でやめた学生が入るとなるとかなりの努力が必要な素晴らしい環境の大学で。
もうそのスポーツはやっていませんが、幼い頃から大好きで興味があると話してくれていたことを専攻して、充実した日々をおくっているようです。
もちろんあれから色んな紆余曲折があり今日があるのですが、私は、この一件を通じて彼からとても大切なことを2つ学ばせてもらいました。
まず一つは、「頼る強さ」です。
彼はこのように異国の地で追い詰められた時に、本当に多くの人に相談をし、助けを求めたそうです。一人で悩んでいてもろくなことにはならないからとにかく話そうと。
話しているうちに状況をより俯瞰してみられるようになり、乗り越えること、自分がどうしたいのか、次なる道を切り開く方向に冷静に集中できるようになったとのことでした。
恥ずかしいとかカッコ悪いとかそんな小さなプライドじゃなくて大きなプライドを持っている彼は、このまま日本に帰りたくない!と強く思っている自分に気が付きどうにかそこに留まりながら次なる道を見つけたいと思ったそうです。
そして、たくさんの人に頼ってたくさんの人の意見をきくことで「自分では思いも寄らない解決策、選択肢」にたくさん出会うことができたそうです。
こうしてピンチをチャンスに変えることができたのです。
人に"HELP"を求めること、みなさんは素直にできますか?
助けてもらったり頼ったりすることは、「弱いこと」「できればしない方が良いこと」と感じてしまっている人も多いかもしれません。または、そこまで深くは考えていないけどなぜか避けてしまっていたりうまくできなかったりする人たちもいるかもしれません。
実は私も、日々色んな人に迷惑をかけ助けられながら生きているにも関わらず、「助けて欲しい」ということがうまく言えないことが多々あります。
そんなとき、彼の強さ、賢さを思い出したいです。
自分なりに解決しようとするよりずっとずっと素晴らしいソリューションを見つけられるかもしれない、成長や幸せに繋げられるかもしれない!
そう気づきたいです。
そしてもう一つ、私は彼に「頼るという強さ」と同時に「頼られる喜び」も教えてもらいました。
あのような大変な状況で思い出してもらえたこと、一緒に考えさせてもらえること、分かち合えることがとてもとても嬉しかったのです。
何度も電話したりメッセージをやりとりする中で、一緒に落ち込んだり、迷ったり、新しい道が見えて喜んだり、大切な人の大切な場面に立ち会えたこと、一緒に経験させてもらえたことはあらためて振り返ってみると本当に大きなギフトでした。彼の親御さんとの絆も深まりました。
逆の立場なら「頼ったら迷惑なんじゃないか」「負担をかけてしまうのではないか」などと考えてしまいそうですが、自分が大切な人や誰かに貢献させてもらうチャンスがあることはこんなにありがたいことなんですね!
「頼る強さ」を発揮できないときに、ちゃんと思い出したいことだと思いました。
そして、大切な人に頼ってもらって嬉しかったら、次もそうしてもらえるように「私を思い出してくれてありがとう!」「一緒に考えさせてくれて嬉しい!」など感謝もしっかり伝えたいです。
「頼る強さ」「頼られる喜び」
この2つを子ども達、学生たちとの時間にも私自身の人生にももっともっと取り入れていきたいとあらためて思っています。
ああやっぱり、子どもたち、生徒たちに教えられることが本当にたくさんです。
お読みいただきありがとうございました。
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